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自治体が直面するスタートアップ支援の課題と戦略【イベントレポート】

公開日:2026.02.27

起業支援ラボでは、トークイベント「自治体独自のスタートアップ支援とは~『起業支援白書』から読み解く2026年の現在地~」を2026年1月に開催。「起業支援白書2025」の調査結果を起点に、自治体におけるスタートアップ支援の現状や課題、今後の方向性について、実際に支援の現場に立つ登壇者が意見を交わす場として企画したものです。
ゲストは、長年スタートアップ施策に取り組む中小機構の石井氏、スタートアップ支援に注力する自治体として静岡市、下関市のご担当者、民間支援としてツクリエ代表の鈴木が登壇。モデレーターをツクリエ小泉が務めました。
自治体のスタートアップ支援の課題と位置付け、スタートアップの把握、国の潮流への期待など、さまざまな角度から話題が展開され、起業支援の現在地が示されました。

平井 朝子

平井朝子事務所 代表

起業支援・起業家教育コーディネーター。不動産ディベロッパー、金融機関勤務を経て、複数の不動産・教育分野のベンチャー立ち上げに参画。2019年より株式会社ツクリエに入社し、国内最大級の起業支援施設、Startup Hub Tokyo(丸の内)のコミュニティマネージャーとして起業支援に従事。その後、南相馬市のスタートアップ支援拠点運営や、国立大学におけるインキュベーション施設の立ち上げ・運営プロジェクトにてマネジメントを担う。2024年に独立し現職。東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻修了(工学修士)。

スタートアップ支援をやるべきか」という議論は終わった

左から、ツクリエ代表鈴木、中小機構 石井芳明氏、静岡市 田中渉氏、下関市 森本渉氏

起業支援白書2025では、「起業活動は地域にとって有益か」「自治体は起業支援を積極的に推進すべきか」といった問いに対し、9割以上の自治体が肯定的に回答(下図)しています。起業支援の必要性そのものについては、すでに大きな合意が形成されている状況になりました。

起業は有益かつ積極的に推進すべきという意見ともに約95%にのぼる ※イベント当日投影資料より

ツクリエ 鈴木英樹(以下、ツクリエ 鈴木):今回の白書を見てまず強く感じたのは、自治体ごとのスタートアップ支援に対する姿勢が、かなりはっきりしてきたという点。前回は「とりあえず様子を見る」「他の自治体の動向を見てから考える」といった雰囲気が読み取れましたが、今回は違いました。

中小企業基盤整備機構 創業・ベンチャー支援部長 石井芳明氏(以下、中小機構 石井氏):そうですね。「起業支援を強化する」「そこまではやらない」といった判断が、自治体ごとに明確に表れ始めています。スタートアップ支援が“選択科目”ではなく、自治体経営の中で位置づけ直され始めている証拠だと思います。「スタートアップ支援をやるべきか」という議論はもう終わり、やること自体は前提として、その上でどこに力を集中させるのか、何をやらないのかを決めるかが問われています。支援策の数が増えてきた今、戦略がないと“全部少しずつやって、どれも効かない”という状態になりかねません。

スタートアップ支援の位置づけ

ツクリエ 小泉祐司(以下、ツクリエ 小泉):起業白書で象徴的なのは、スタートアップに対する期待の高さでした。特に人口30万人以上の自治体では100%が「スタートアップに期待している」と回答。

理由として、「人口減少対策」「雇用創出」「地域経済の活性化」「地域課題の解決」「既存産業との連携」など、多様なワードがあがりました。スタートアップ支援の目的は自治体ごとに異なると思いますが、静岡市、下関市ではいかがですか?

静岡市 経済局商工部産業政策課 スタートアップ支援係長 田中渉氏(以下、静岡市 田中氏):静岡市のスタートアップ支援の目的は、「地域課題の解決」と「地域経済の活性化・波及」の2つです。複雑化した地域課題を行政だけで解決していくのは難しい中で、スタートアップの革新的な技術の活用により、共に取り組んでいきたい。また地域企業との協業で、新しいチャレンジが次々に生まれることを期待しています。

下関市 産業振興部産業振興課主査スタートアップ推進室長 森本渉氏(以下、下関市 森本氏):下関市も、ほぼ同じで、経済優先、産業第一ですね。中には、まちづくりの視点でやっていらっしゃる自治体もあると思いますが、われわれは、市内企業に稼いでいただくことが大事。ノウハウがあっても人口減少などで技術適用が飽和状態にある中で、スタートアップの活力を入れて、イノベーションを興していく。また行政としてやっている以上、社会課題の解決がテーマです。マンパワーが不足している役所の各セクションで、スタートアップの知見を注入したいと考えています。

スタートアップ支援の変化とトレンド

中小機構 石井氏:国がスタートアップ・ベンチャー支援を本格的に位置付けたのが、2013年でした。安倍政権の政策を支える「3本の矢」(金融、財政、成長)の中で、成長のためには新しいプレイヤーが必要というところから始まりました。その後、2022年の「スタートアップ育成5か年計画」(岸田政権)で、さらにぐっと伸びました。当時の総理のスローガン「経済活力と社会課題解決の二兎を追う」。そこで「社会課題解決」というワードが全面に出てきたのです。もともと、スタートアップ政策は、雇用・経済活力とイノベーションを目的としています。イノベーションが社会課題解決に繋がるということなので、支援の軸・内容は当初から引き継がれているといえます。

一方、予算規模は莫大に増えました。例えば2022年の補正予算では事業規模が約10兆円に。内訳は、ディープテックや海外展開目的の補助金の他、スタートアップ・エコシステム、拠点都市政策などの地域を盛り上げる目的のものなど、さまざまです。
スタートアップ支援の意義は、プレイヤーによって違うと思います。国でも2つの視点で見ています。1つは、イノベーションで世界で勝っていくという点。もう一つは、地域という文脈では、雇用創出の観点。人口流動化を食い止め、地方で豊かな暮らしをする・生み出すプレイヤーとして、スタートアップがもっと出てきてほしいと思います。

エクイティを前提としないスタートアップも

ツクリエ 鈴木:最近の起業支援トレンドとして、「ディープテック」「グローバル」の2つは、どこに行っても挙がるキーワードです。ここは確実にやっていかないといけません。一方で、全体の創業数が伸びているかというと、そうでもない。起業・創業の裾野を広げ、底上げをしないと、いきなり大スターが出てこないので。裾野拡大をしっかりとやりつつ、生まれてきた芽を育てる必要があるのではないかと思います。

ツクリエ代表 鈴木。スタートアップの盛況感はあるが、創業数自体は伸びていないと問題提起

中小機構 石井氏:大事なポイントですね。「ディープテック」と「グローバル」は、基本的にエクイティファイナンス(VCからの調達)が前提。Jカーブでぐっと急成長するモデルです。ただ、地域においては、エクイティを前提としないスタートアップがもっと出てこないといけないし、エクイティ前提ではないスタートアップの支援をもう少しやっていかないといけません。実際に、起業家自身の認識ではスモールビジネスとして始め、スタートアップの規模に急成長する事例もあります。自己資金で始めて、営業キャッシュフローで成長していく事業もありますし、エンジェル投資や補助金を組み合わせながら伸びていく企業も多いです。そうした企業を「スタートアップではない」と線引きしてしまうと、地域の実態を取りこぼしてしまいます。以前からエンジェル税制(スタートアップへ投資を行った個人投資家に対して税制上の優遇措置を行う制度)やオープンイノベーション税制などはありますが、あまりうまく使われていません。地方において、成長に時間のかかるルートスタートアップ型の事業をどう応援するか? 例えば、VC調達とNEDOのグラントを組み合わせるなど、工夫のしどころがあると考えています。

スタートアップが生まれる兆しをどうつくる?

支援策は拡充している一方、自治体の現場ではスタートアップが生まれる兆し・機運はあるのでしょうか? 起業白書でのスタートアップの生まれる兆候があるか?の設問(下図)では、「ある」の回答が全体の34.8%、「ない」が58.4%となりました。

ツクリエ 小泉:この結果はかなりリアルな数字かと感じました。また、人口が多い自治体ほど機運があるという傾向になりましたが、実際に自治体では、兆しを生み出すために、どういった取り組みがあるのか、また光は見えているのかが、気になるところです。

モデレーターを務めたツクリエ小泉

静岡市 田中氏:静岡市では、機運醸成のためにコミュニティが重要だと考えています。新しくチャレンジをしている先輩起業家が後輩を育てていく仕組みづくりに、積極的に取り組んでいこうと考えています。

下関市 森本氏:われわれも、市外からスタートアップを招聘して地元企業とのイノベーションを生み出す支援に加え、市内からスタートアップを生み出したく、「生まれる兆し」を醸成するために力を入れているのが、起業家教育です。

「起業しようと思えばできる」日本の低迷する開業率

中小機構 石井氏:日本の開業率は3.5~4%程度で、10~15%の欧米と比べると、依然として低迷しています。一方で、いざ起業しようと思った人が実際に起業する確率は、日本はアメリカやドイツよりも高く、イギリスに次ぐ2位となっています。つまり、日本は「起業しようと思えば起業できる国」といえます。では、なぜ開業率が低迷しているのかというと、起業を志す人、関心ある人が少ないという問題です。

実は、①起業した人を知っている②起業に関する知識、経験がある③起業に関して有利だと思っている、のすべてに「NO」と回答する、いわゆる「起業無関心層」が国民の約76%となっています。欧米は国民の2~3割に対し、日本は突出してこの数値が高い。

引用:経済産業省資料 003.pdf

ツクリエ 鈴木:起業に無関心な層が非常に多いですよね。中小企業白書でも、起業に関心がない層が7割以上いるという結果が出ています。

中小機構 石井氏:学生や大企業勤務の方から話を聞くと、「親に反対された」「配偶者に止められた」という声をよく聞きます。「親ブロック」「嫁ブロック」「旦那ブロック」などとも言われますね。身近にロールモデルがいないこともあり、善意で止めているのだと思います。
このように、起業数がなかなか増えない背景には、心理的ハードルの高さもあります。これは、制度や補助金を整えただけでは解消できません。もっと手前の段階で、「起業は特別な人がやるものではない」という認識を育てていく必要があります。創業支援策の充実はもちろん大切ですが、そこで起業家教育が必要になってきます。

地域に浸透しはじめる、起業家教育

中小機構 石井氏起業家教育は本当に重要だと思っています。ただ、即効性はありません。1年や2年で成果が出るものではなく、10年、20年という時間軸で見ていく必要があります。

ツクリエ 鈴木:私たちも起業家教育事業に近年、特に力を入れています。ただ、教育現場ではまだまだ「起業=お金儲け」といった悪印象を持っていらっしゃるケースも多いです。年々、改善されていくと思いますが、根気よくやらない限り、起業に関心を持つ層自体は増えないと思います。

下関市 森本氏:私たちは、下関から起業家を生み出したく、市立5大学や高校と連携し、スタートアップ実務連携とアントレプレナーシップ教育の両面から取り組んでいます。下関市立大学では学内にベンチャーキャピタルを設立。現在は研究者主導ですが、大学・行政の連携で兆しを生み出したいと考えています。すぐに起業する人が増えるわけではありませんが、学生の意識は少しずつ変わってきていると感じます。

中小機構 石井氏:ぜひ自治体様に、教育委員会へ働きかけていただきたいですね。産業振興課と教育委員会はまったく別セクションですが、起業家支援に踏み出すためには、教育委員会の動きが不可欠です。少し無理にでもちょっと頑張っていただいて、難しければ首長経由でもやっていただけると良いかなと。

静岡市 田中氏:最近は学校側もかなり柔らかくなってきたと感じています。起業家教育について意向を伝えると、中学・高校の先生方も前向きに捉えていただいたり、先生の異動先の学校でも取り組んでいただけたりと。

中小機構 石井氏:現在は学校で「探求の時間」があり、そこに導入していただくとやりやすいです。ただ、現時点では校長先生や担当の先生の熱意に依る部分が大きく、その人がいるときはいいが人員が替わると続かないという状況もあります。教育委員会の理解や、熱量を持った教員の存在も非常に重要ですが、次の課題としては、仕組みとしてどう根付かせるかが重要です。

スタートアップの把握方法

ツクリエ 小泉:スタートアップ支援策や起業家教育などの取り組みについて見てきましたが、ではスタートアップはどれぐらい増えたのかを判断する際、数の把握の課題があります。起業白書の結果では、7割超の自治体が「地域内のスタートアップを把握していない(できない)」と回答しています。

下関市 森本氏:実際のところ、スタートアップの把握の方法はかなりアナログです。スタートアップ支援室の担当2名で、汗をかいて、足で稼いでいる状況。全体としては、産業振興部の職員が30名いるので、直接ヒアリングしたり、金融機関や商工会議所から情報をもらったりしています。時には子育て支援部局から「母子家庭貸付金を活用して起業した方がいる」といった情報が入ることもあります。各所にアンテナを張っていないと、なかなか網羅できません。

静岡市 田中氏:私たちは、民間のデータベースに市の情報を加えている状況です。市の数値としては、静岡県の方で実施している把握方法と同じ指標でカウントしています。

中小機構 石井氏統計データだけで把握するのは、かなり難しいと思います。開業届の件数や中小企業白書の創業数データは、いわば創業支援のベースを示すものです。ただ、それだけでスタートアップの実態が分かるわけではありません。創業支援等事業計画を活用している企業は、その次のレイヤーに位置づけられますが、そこから先、事業が成長するかどうかは、数字だけでは判断できません。

成長の一つの目安としてよく言われるのが、実際に市場で売上を立てているか。その判断をするうえで参考になるのが、金融機関の視点です。例えば、日本政策金融公庫はや地域の信用金庫や地方銀行も、創業時からを含め、日常的な取引や支援を通じて、企業の状況を把握しています。自治体が金融機関に話を聞くだけでも、把握の精度はかなり上がると思います。

もう一つの目安として、NEDOやJSTといったスタートアップ向けの補助金や研究開発支援制度を活用しているかを見る方法があります。こうした制度を使っている企業は、一定の技術性や成長志向を持っているケースが多いです。実際、中小機構でも、VC経由だけでなく、日本政策金融公庫や金融機関からの紹介、あるいはJVA(Japan Venture Awards)の表彰者やニュービジネス系の取り組みをきっかけに把握できるケースが多くあります。
統計、金融機関、補助金、紹介といった複数の入口を組み合わせながら、結果的にスタートアップを把握する精度を上げていく。そのくらいの捉え方が、自治体の現場には合っているのではないでしょうか。

スタートアップ’の定義は不明確でもいい

中小機構 石井氏:私は、スタートアップかどうかを厳密に定義しすぎなくてもいいと思っています。スモールビジネスでも、第二創業でも、新しい挑戦をしている人たちを一つのコミュニティとして捉えることが重要です。

「中小企業」の定義が決まっているのは、支援策を出すための一つの線引きです。場を盛り上げたりコミュニテイをつくって若者を呼んでいく際に、線を引きすぎることで支援の網からこぼれ落ちてしまう企業体が出てきます。それは自治体にも地域にとっても、非常にもったいないこと。曖昧な部分もありながら仲間を増やすのがいいかなと思っています。

国のスタートアップ支援策への期待感

起業白書では、国のスタートアップ支援策に対し67.5%が「期待」する一方、前年差では「期待」の割合が8.4ポイント減少しており、支援の必要性が浸透する一方で、制度運用面での課題が意識され始めていることがうかがえます。

ツクリエ 小泉:白書の結果からは、国のスタートアップ支援への期待感は大きいと感じています。財政面など基礎自治体だけでは限界がある中で、国にどのような点を期待しているのか、率直にどう見ていますか?

中小機構 石井氏ディープテックやグローバル領域は、国の支援ツールが比較的明確で、支援しやすい分野だと思います。一方で、地方における支援はツールが難しい部分があります。

もともと国の中小企業政策は、国から自治体へ資金を供給し、自治体が中小企業政策を動かす形でしたが、行政改革の流れで資金の流れをつくるのが難しくなった背景があります。ただ、総務省の交付金など活用できる手段はいくつかあります。また税制については、エンジェル税制やオープンイノベーション税制のように、場所を問わず活用できる制度が整っています。こうした制度をもっと周知し、地方でも使えるようにしていくことも重要だと思います。
また、特に地方大学で、非常に競争力がありながら事業化できていない研究シーズがまだまだ多くあると思っていて、国としても引き続き支援強化の方向でいます。
また、高市政権で掲げられた17の成長戦略分野を各自治体で確認して、「これはうちに合う」という内容を深掘りしていただくと、支援策や公共調達も動きやすくなると思います。

中小機構 石井氏:「うちはスタートアップがいないから期待しない」という自治体もありますが、スタートアップを狭くとらえず、創業支援、第二創業、ゼブラ企業など広く考えて、うまく国の施策を使っていただけると良いと思います。

ツクリエ 鈴木:この10年を見ても、国のスタートアップ支援予算は確実に増えていると感じます。私は昔から日本の起業支援・スタートアップ支援政策は非常にうまくできていると思っていましたが、あまり知られていないのが欠点でした。最近は機運が高まり、少しずつ浸透してきた印象があります。

中小機構 石井氏J-Startupは、スタートアップのロールモデルを示す取り組みとして目指してきたもので、その後も関連する政策が広がってきています。まだ足りない部分もありますが、引き続き努力していくことだと思います。

ツクリエ 小泉:東北では「第二のヘラルボニー」などの言い回しも聞きます。少し前だと「第二のメルカリ」など。そういった意味で、背中を見ながら後進が育つ動きが各所で出てきていますね。

静岡市、下関市のスタートアップ支援策

静岡市の取り組み:社会課題解決型の共創を軸に、支援予算を拡充

静岡市 田中氏。深刻な人口減少問題や、県内スタートアップ数では浜松市におよばない課題があるがさまざまな地域課題の解決をスタートアップと協働で推進

静岡市 田中氏:静岡市では人口減少が大きな課題です。市域も広く、多様な地域環境や住民ニーズを抱えています。開業率やスタートアップ数は決して高い状況ではありませんが、その中で、まずは地域とスタートアップの共創を生み出し継続させていく“下支え”を、自治体の役割と捉えています。令和7年度のスタートアップ支援予算は約3億1,000万円で、前年度から大幅に増額しています。

行政・地域・スタートアップのチームで社会課題を解決
複数ある施策の中で、特に社会課題解決に直結する取り組みとして「知・地域共創コンテスト」を実施しています。特徴は、単なるコンテスト形式にとどまらない点。行政職員や地域関係者、提案するスタートアップがチームを組み、採択後も一緒になって課題解決に取り組んでいきます。実証実験の支援や資金提供など、踏み込んで伴走する形で、新しい社会の仕組みづくりに繋げることを目指しています。今年度は2回目の実施を予定しています。

市内企業とのオープンイノベーション、アトツギベンチャー創出支援
スタートアップと市内企業の連携を促す「市内企業イノベーション創出支援プログラム」にも力を入れています。オープンイノベーションの創出支援に加え、アトツギベンチャーの創出を見据えたセミナーやワークショップ、マッチング、そしてプロトタイプ検証・顧客ヒアリングに対する補助金拠出などを行っています。

スタートアップへの直接投資
さらに、社会課題解決に取り組むスタートアップに、市からの直接出資を行う取り組みを今年度から開始しました。自治体が資金面でも関与することで、地域における挑戦を後押ししたいと考えています。

支援の推進は、静岡県とも役割分担を行いながら連携して進めています。自治体単独で完結させるのではなく、県との連携も含めた支援体制を構築することで、地域のスタートアップ・エコシステム形成につなげていきたいと考えています。

下関市の取り組み:ロケーションと金融を強みに、3カ年で支援基盤を構築

下関市 森本氏。下関市では、今年度「スタートアップ戦略」(3カ年)を策定。スタートアップ・エコシステムの専門拠点を2028年4月に設置予定

下関市 森本氏:下関は山口県内最大の都市でもあり、地域金融機関とも連携しながら支援を進めています。下関市の強みとして、まず“ロケーション”があります。本州の西端に位置し、東アジアに近い地理的条件を持っています。例えばソウルから約500kmという距離感で、歴史的にも貿易都市としての背景があります。海に囲まれた風光明媚な環境で、魚市場など水産業も含めた地域資源が豊富で、暮らしやすさや災害の少なさも魅力と考えています。

3年後の支援拠点オープンをめどに
下関市では今年度、「スタートアップ戦略」を策定し、3カ年計画で支援を進めています。スタートアップ支援、創業・起業支援、金融支援の3つの柱で一体的に取り組んでいる点が特徴です。出口戦略として、3年後には支援拠点の設置を目指しています。2028年4月の拠点オープンを一つの目標に、現在はエコシステム形成に向けた環境整備を進めている段階です。

制度融資を活用し、アライアンス強化
支援策の大きな柱が、「アライアンス」です。市内企業と組めば、各種制度融資の活用が可能となっています。補助金施策が十分にない分、制度融資を活用。今年度は50億円規模の融資実績があり、企業資金融資では上限1,500万円、1.3%(2026年1月現在)からの低金利で提供しています。

庁内業務におけるスタートアップ活用
さらに、行政としてスタートアップ支援を進める以上、社会課題解決にもつなげたいと考えています。インフラ老朽化など自治体が抱える課題に対して、スタートアップの技術やサービスを活用できるよう、公共調達の仕組みづくりや庁内調整も進めていく方針です。

先述の通り起業家教育にも力を入れています。下関にゆかりのあるFigma Japan代表の川延浩彰氏をアンバサダーとして迎えるほか、中高生や大学生のアントレプレナーシップを高める取り組みを進めており、大学連携も含めて、今後さらに展開していきたいと考えています。

おわりに
起業支援白書から導かれたデータをもとに、スタートアップ支援に注力する自治体の支援の具多策とそれが行われるに至った背景などを担当者から直接聞くことができる貴重な機会となりました。

最後に、中小機構 石井氏より「自治体は、民間企業や大学との連携で動きを生み出すキープレイヤー」、ツクリエ 鈴木から「制度や資金も重要だが、職員による熱意ある支援が起業家の大きな原動力になる」というコメントで締めくくられました。

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