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【TechGALA 2026レポート DAY3】高い技術を社会実装するために必要な大きなうねり

公開日:2026.02.02

愛知・名古屋・浜松の東海エリアにおけるテクノロジーの祭典「TechGALA Japan(テックガラ・ジャパン)2026」の現場からレポート。今回は最終日となるDAY3(1/29)に行われた内容をもとに、基調講演で語られた未来像と、M&Aや展示・商談といった実装に近い議論や動きから、TechGALAで語られてきた構想が、どのような前提や意思決定の上に成り立とうとしているのかを整理する。

起業支援ラボ編集部

「起業支援とは何か?」をデータやファクト、哲学から考察し、提言するWebメディアの編集部。起業支援業界内外のさまざまな人たちと、さまざまな角度から問いを投げかけ、起業支援というブラックボックスを明らかにしてゆく。起業の開業率・存続率・成長率を上げ、社会の新陳代謝を促す起業の支援を考える。

ノーベル物理学賞・天野教授の基調講演で幕開け

「秩序」を語り、「意思決定」を見せ、「現場」を確かめた最終日

TechGALA 2026のDAY3は、会場をSTATION Aiに移し、3日間の議論を「実装」側へ引き寄せて締めくくる一日だった。
未来を語るイベントは多いが、残るのは言葉の熱量よりも実際問題「どうやって実現するのか」という現実だ。
この日、基調講演で示されたのは“未来の秩序”という大きな視点だが、内容は意外なほど足元にあった。AIもデータセンターも、結局は半導体と電力で動く。社会実装は、意思決定と現場での接続が鍵だ。

「未来の秩序」は、半導体と電力の現実から始まった

DAY3の中核コンテンツが、ノーベル物理学賞を受賞し名古屋大学教授の天野浩氏らによる基調講演「マテリアル研究が社会をどう変えるか -未来を創る知の拠点からの提言」だ。青色LEDの開発者として知られる天野氏は、まず聴衆に“インフラの現実”から話を始めた。
AIも半導体で動いており、データセンターもAIも、半導体と電力の上に成り立っている。
現在、電力消費の約3分の1が電力、その7割が化石燃料という指摘だった。喫緊の課題は高効率化だが、その先に見据えられているのは、化石燃料に頼らない構造への転換だ。その実現に関わるのが半導体である。

インフラの現実を語る、天野氏

技術×社会の動きが普及のモメンタムに

講演の中盤で天野氏は、高い技術だけでは社会実装は進まないと繰り返した。青色LEDの成功を象徴するエピソードとして語られたのが、「助けてくれたのは女子高生」という言葉。携帯電話を1年で買い替える消費行動が、結果的に普及の速度を押し上げた。技術の勝利というより、社会側の動きが“普及のモメンタム”になったという話である。
成功の理由は何だったのか。
「多くの分野の人が集まってくる」「思いが重なる」――。起業家と一緒にやった経験もあったという。技術の成否の外側に、関わる人の集まりと熱の重なりがある。
その話は、核融合(フュージョン)にもつながっていく。スタートアップの参入によって開発が劇的に加速したという指摘は、研究開発の世界でも“スピードの源泉”が変わりつつあることを示していた。
社会実装は少し先としても、R&D市場は1兆円規模で技術提供により成り立っている。
「だからこそモメンタムが大事」と語られ、勢いだけでなく、市場ごとに再現性が異なるからこそ、多様なエコシステムが必要という話に帰結した。

京都フュージョニアリング株式会社 長尾 昂氏はスタートアップの参入による開発スピードの加速を語った。

大学はシーズの宝庫だが社会実装が難しい

誰が取りまとめるか?

“危機感”として語られたのが、ディープテック領域の難しさだ。「うまくやらなければ金食い虫になる」。だからこそ、うまく取りまとめることが必要だという。
では、誰がそれをやるのか。
少しの沈黙の後、出てきたキーワードが「カンパニークリエイション」だった。俎上にのせみんなでやる。分野横断で組み立てる。しかし日本ではそれが十分にできていない――という指摘は、会場の空気を引き締めた。

一方で、大学側にも変化がある。外部からの提案を受ける体制が整ってきている、という言葉もあった。「大学はシーズの宝箱」だが、研究者は社会実装を難しいと感じている。天野氏自身も社会実装できていない研究が多いという。
社会実装は企業との連携が大切という現実感も語られた。「もし当時、STATION Aiのような場所があれば」という一言は、DAY3の舞台と重なって聞こえた。

「大学はシーズの宝箱」だが、研究者は社会実装を難しいと感じていると天野氏。

事業スケールを「M&Aありき」にはしない

セッション『「現場の仕事が、M&Aをつくる」日々の業務とその延長線上にある、経営戦略としてのM&A」』は、DAY3のテーマを一段具体へ落とし込む内容。事業をスケールさせる経営戦略としてのM&Aだ。
一般に、M&Aは経営陣サイドが考える内容であり、現場の社員には遠い話と思われがちだが、ここでは逆の順番で語られていた。

前提としての「時価総額100億問題」の説明からセッションが始まった。

愛知エリアでは、この25年でM&Aの動きが活発になっているという。登壇者の一人、株式会社コメ兵 代表取締役社長の山内祐也氏は、コメ兵ではM&Aの事例が多く、10年前はM&Aは大変そうと思われていたが、今ではサービス提供会社も増え、機会そのものが増えてきた。ただ、M&Aが盛り上がっているからといって「M&Aありき」にはしないと語った。
(M&A抜きに)オーガニックな経営計画を描きつつ、M&Aでもいいと考える。シナジーによって上方修正されることもあるが、それは結果として生まれるもので、統合ありき・シナジーありきではない。「想定通りいかない前提で向き合う」という言葉が印象に残った。

「M&Aありき」で考えてはいけないと山内氏

事業は明日から変わっても、組織と人の成長には時間がかかる。
支援者側として響いたのは、M&Aを含めた選択肢の話は「オプション」という点だ。

支援者が提供できる価値は何か。STATION AiはM&Aを含め、スタートアップを応援し支援する環境が整っている一方で、選択肢がありすぎるともいえる。成長過程のスタートアップはどこに注力するかを考えなければならない。1000社のネットワークがあるからこそ、意思決定が問われる。「(自社の)所有にこだわると育たないこともある」という言葉も、起業家支援の現場に近いニュアンスとして残った。

言葉ではなく、行動で確かめる時間

展示とスピードデイティング(スタートアップと事業会社・VC・CVC・金融機関の担当者が気軽に対話できる「壁打ち」形式のビジネスマッチング企画)のエリアに移ると、空気がまた変わる。
とにかく人が多い。各展示は最小のスペースがひしめきあうが、各担当者は常に誰かと話している。東京都(TIB)、大阪府、京都市など自治体ブースも人が途切れず、会場全体に“止まらない”感じがあった。展示スペースでは、技術の説明よりも「使いどころ」の話が中心になっていたように見える。
「名刺交換で終わっていないか」という観点で見ると、少なくとも空気は“次の約束に向けた会話”に寄っていた。実装は、こういう場所で進んでいくのだろうと体感できる時間だった。

展示エリアは終始コミュニケーションを行う人であふれていた。

TechGALA Japan2026のキーワード、次回開催

クロージングで、TechGALA Japan2026のキーワードとして挙げられたのは、「熱量/共鳴/身体/深度/物語」。取材を通して強く残った印象としても、この3つ(熱量・身体・物語)は確かに腑に落ちる。
愛知県知事、名古屋副市長、学生ボランティア代表、グローバル代表などの挨拶が続いたが、最も心に響いたのはスタートアップ代表の声だった、というのもDAY3らしい着地だった。

TechGALA総合プロデューサー 奥田浩美氏により今年のキーワードが述べられる。

愛知県知事、名古屋副市長、スタートアップ、学生ボランティア、グローバル代表など壇上に。

TechGALA Japan次回の開催は、2026年12月15日(火)〜17日(木に予定されていることが共有され、会場がどよめいた。

次回の開催がサプライズで発表された。

最後は、昨年に続きnobodyknows+の音楽が会場を一気に煽る。TechGALAの3日間で積み上がった熱量が、そのまま次へ向かう推進力として放たれるようであった。

昨年に続きnobodyknows+がしめくくる。

DAY3が示した「現場の手触り」

DAY3は、未来を語る日ではなく、未来を「成り立たせる」ための条件を並べる日だった。
半導体と電力という足元の現実。社会実装を進めるモメンタム。ディープテックを取りまとめる仕組み。意思決定としてのM&A。そして、展示と対話の現場で動き始めている実感。
未来は、言葉だけでは進まない。
誰が、どこで、どうやって動かすのか。
TechGALA 2026の最終日は、その問いを“現場の手触り”として残して終わった。

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