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支援の現場を支える“人”をどう育てるか?――市原商工会議所で実施した「コミュニティマネージャー育成研修」レポート

公開日:2025.09.05

支援の現場を支える“人”をどう育てるか?――市原商工会議所で実施した「コミュニティマネージャー育成研修」レポート

地域の起業支援施設やコワーキングスペースなど、さまざまな「場」が立ち上がる中で、“人”の存在の重要さが注目されています。起業支援施設でハブ的な役割を担い、場を運営し起業家や地域プレイヤーとのつながりを生み出す「コミュニティマネージャー」。彼らの人材育成を目的に、2025年6月29日、市原商工会議所の職員の皆さまを対象に、コミュニティマネージャー育成研修を実施。その内容をレポートします。

海渡 雅由

株式会社ツクリエ 取締役

短大卒業後(株)博報堂入社。人事、雑誌営業等に従事し2011年に退社。その後、フリーで出版社・メーカー等で新規事業開発やイベントセミナー運営、化粧品会社のPRなどを経て、広報・PR・ブランディングをメインにした法人を設立。2016年の開所時より起業支援施設Startup Hub Tokyo 丸の内の広報・PRとして携わり、現在はツクリエの本部カンパニーの責任者として従事。自社のブランディング、オウンドメディア、人事制度構築など組織成長を推進。一方、愛知ヒトハナ、山口メグリバ、ベンチャー技術大賞受賞者など起業家の広報PR支援も行っている。また、起業支援者教育事業のサービスの立上げにも携わる。

コミュニティとは何か?から始まる学び

起業支援施設の運営やプログラムを実施する中で、「コミュニティマネージャー」の存在がどうやら重要とは見聞きするものの、どんな役割があり実際に何をしているのかは意外と知られていません。
今回は、コミュニティマネージャーの役割と具体的な業務内容を理解し、自らの組織でコミュニティマネージャーができないか、また外部に委託する場合でもまずは知っておきたいというニーズにお応えする形で実現しました。

研修では、「“コミュニティ”とは?」という問いからスタート。単なる人の集まりとの違いや、成功するコミュニティに共通する“5つの共有要素”(目的・価値観・時間・場所・しくみ)について、座学を通して理解を深めました。

また、地域や施設に応じて多様に存在する「コミュニティマネージャー」の役割についても、事例を交えて解説。大田区「六郷BASE」、荒川区「イデタチ東京」、山口市「メグリバ」などの施設を紹介し、地域性や支援方針に合わせたコンセプト設計の重要性を学んでいただきました。

市原商工会議所にて実施した「コミュニティマネージャー育成研修」の様子。テーマは「コミュニティとは何か?」

実践型ワークで自分たちだけのコミュニティ戦略を考える

後半は、自分たちの地域や施設に置き換えて考える実践型ワークショップを実施。
「どんな人に、どんな価値を届けたいのか」
――そんな問いを出発点に、
●自分たちの強み・地域資源の棚卸し
●利用者像やコンセプトの明確化
●コンテンツや運営体制の設計
●KPI(エンゲージメント、コラボ、営業など)の設定
といった一連のコミュニティ設計プロセスを、ワークシートを使って体験していただきました。

それぞれの地域性や資源をもとに、独自の戦略を設計中

チームごとにまとめた「Myコミュニティ戦略」。地域特性が活かされた、多様なプランを共有

参加者の声
「コミュニティマネージャーの役割が明確になり、参加者の導入ステップが視覚的に理解できた」
「コミュニティの登場人物として、運営側だけでなく参加者にもそれぞれの役割があることが分かった」
「起業家向けのコミュニティでも、地域性や目的により支援内容やターゲットが大きく変わる事例が印象的だった」
「座学とワークのバランスがよく、“コミュニティとは?”を深く考える良い機会になりました」
「KPIの設定に関しては難しさも感じたが、イデタチ東京やメグリバなどの具体例が参考になった」
「逆算で考える“しくみからつくるコミュニティ設計”が新鮮で、普段の業務とは異なる視点に気づけた」
「商工会議所の原点に立ち返るような内容だった。自分の業務の意味をあらためて考えるきっかけになった」

研修を通じて見えたこと

今回のコミュニティマネージャー育成研修を通じて明らかになったのは、「場」づくりにおける“人”の役割の重要性です。
コミュニティにおける“人の役割”や、地域ごとの支援の多様性、KPIやコンセプトといった構造的な視点の重要性に多くの気づきがあったことが、参加者の声から読み取れました。

このような反応からも、コミュニティマネージャーという存在が、単なる施設運営者という枠を超え、地域支援の質を左右する「戦略的な担い手」、さらには起業支援エコシステムの「ハブ」として期待されていることが浮かび上がってきます。

起業支援施設においては、制度やプログラムの整備と同じくらい、コミュニティマネージャーの資質と視点の有無が、支援の質と継続性を大きく左右する――そうした現場からの“実感”が見えてきました。
今回の市原商工会議所での研修は、地域に根ざした支援人材育成のモデルケースとなりました。

地域と起業家をつなぐキーパーソンを育てる

起業支援施設の価値は、「場」だけでなく「人」によって大きく左右されます。今回の研修は、場を活かし、地域と起業家をつなぐキーパーソン=コミュニティマネージャーの育成をめざした第一歩です。

私たちツクリエでは、今後さらに「支援者の支援」に力を入れるべく、起業支援人材の育成に特化した子会社「カタリストアカデミー」を立ち上げました。地域や分野を越えて、起業家を支える“伴走者”を育てる仕組みを構築し、より多くの現場に送り出すことが目的です。場をつくるだけでは場が活きないことを、数々の起業支援施設を運営する中で痛感しています。
地域に根ざした支援の担い手を育て、支援の質そのものを高めることで、起業支援エコシステムの土壌を豊かにしていきたいと願っています。

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