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【TechGALA 2026レポート DAY2】Central Japan発スタートアップ・エコシステムを多層的に構築中

公開日:2026.01.30

愛知・名古屋・浜松の東海エリアおけるテクノロジーの祭典「TechGALA Japan(テックガラ・ジャパン)2026」の現場からレポート。今回は、DAY2となる1/28に行われた内容から、スタートアップ・エコシステム形成のうねり、双方向性のあるグローバル視点などの様子を紹介する。

起業支援ラボ編集部

「起業支援とは何か?」をデータやファクト、哲学から考察し、提言するWebメディアの編集部。起業支援業界内外のさまざまな人たちと、さまざまな角度から問いを投げかけ、起業支援というブラックボックスを明らかにしてゆく。起業の開業率・存続率・成長率を上げ、社会の新陳代謝を促す起業の支援を考える。

Central Japanは「地域」ではなく、チームでありエコシステム

DAY2の軸となったセッションの一つが、「Central Japan発、世界への挑戦:地域スタートアップの成長戦略」。地域資源を活用してグローバルな競争力を獲得し、各機関との連携を通じて持続可能なスタートアップエコシステムを築くかが議論された。会場は満席となり、通路も人で埋まるほどの関心を集めていた。
このセッションでは、愛知県を中心とするCentral Japanが、単なる地理的呼称ではなく、経団連・行政・大学・民間によって構成される「Central Japan Startup Ecosystem Consortium」というチームであることが共有された。
産業界、大学・研究機関、自治体、民間の支援主体が、それぞれの役割を持ちながら関与し、その集合体がCentral Japanというスタートアップ・エコシステムを形づくっている。
そのため、議論は「どこが強い地域か」といった比較論ではなく、このスタートアップ・エコシステムがどう機能し、どう循環していくのかという文脈で進んでいった。

強みは「個社」ではなく「層」にある

Central Japanの強みとして繰り返し言及されたのは、特定のスタートアップの成功事例ではなく、産業・大学・人材が重なり合う“層”としての厚みだ。
製造業を中心とした産業基盤と、大学・研究機関が近い距離に存在し、人や技術が行き来しやすい構造があることは、このエコシステムの前提条件でもある。
トヨタに代表される製造業が持つグローバル基準の視点は、ものづくり分野に限らず、ソフトウェアや非製造業のスタートアップにも影響を与えているという。
一方、登壇者からは、「ユニークな起業家はいるが、グローバルを視野に入れているかが課題」という率直な言葉も聞かれた。

数あるセッションの中でも珍しい、揃いのTechGARA法被での登壇が印象的だった。

産業と大学の基盤に、行政の機運が重なった

Central Japanでは、産業と大学の存在感が以前から語られてきた。
製造業をはじめとした産業基盤と、大学・研究機関が近い距離にあり、人や技術が行き来しやすい構造があることは、このエコシステムの土台でもある。
近年、そうした土台の上に、行政によるスタートアップ支援や拠点づくりの動きが重なり、エコシステムとして地域全体を捉え直そうとする機運が、現場レベルでも明確に感じられるようになった。
研究成果や人材を、どのように事業や次の挑戦へと循環させていくのか。その設計が問われている。

Central Japanは、経団連・行政・大学・民間で構成されるエコシステム

グローバルは「目的」ではなく一つの手段

議論の前提として共有されていたのは、スタートアップが初期段階から世界市場に挑むことは、一般論としてハイリスクである、という認識だった。
そのうえで、

  • どの段階でグローバルと接続するか
  • 日本市場での検証をどう位置づけるか
  • スタートアップが「外に出る」だけでなく、海外のスタートアップを「地域に呼び込む」ことも視野にグローバルをどう捉えるか

といった論点が、エコシステム全体の設計の一部として語られていた。

未登の山に道をつくっている」という当事者の言葉

セッション終盤、登壇したスタートアップ自身が、自らの状況を「未登の山に道をつくっている途中」と表現。成功の道筋が最初から見えているわけではない。それでも、登れるところまで登り切るしかない。その言葉には、戦略や制度の議論とは別の、当事者ならではの実感がにじんでいた。
Central Japanのエコシステムは、完成形ではなく、試行錯誤を前提に、道をつくりながら進んでいる段階にある。

未登への挑戦を楽しそうに話してくれる、株式会社スタメン 大西 泰平氏

Grand Pitch 2026が示していた、Central Japanの現在地

DAY2に行われた 【PITCH CONTEST】Grand Pitch 2026 は、TechGALAを主催するCentral Japan Startup Ecosystem Consortiumによるグローバルピッチコンテストだ。
海外市場を目指す日本のスタートアップ日本市場への進出を狙うグローバルスタートアップが一堂に会し、新たなパートナーシップや市場展開の可能性を切り拓く場として位置づけられている。

世界200社超から15社へ──「選ばれた競争」の舞台

今回のGrand Pitchには、世界200社以上の応募があり、そのうち約80%は海外企業だった。
厳正な審査を経て、世界10カ国・地域から選ばれた15社が本選に進出。5分間の英語ピッチで、自社プロダクトと市場への挑戦を語った。
ディープテック、製造業DX、ライフサイエンス、サステナブル領域など、日本の産業基盤と親和性の高いテーマが多く並んだのも特徴的だった。

印象的だった、聴衆と対話をするようなスタイルのピッチ

優勝はUnitX Inc.──「日本市場」を本気で見据える意思

優勝を果たしたのは、製造業向けにAIと独自の撮像技術を活用した自動外観検査システムを提供するUnitX Inc.(米国)。UnitXのCEOであるMnti Cao氏は、受賞後のコメントで次のように語っている。

「この1年間、日本市場に多くの努力を注いできました。日本はアジアにおいて最も重要な市場の一つと考えています。このGrand Pitchを通じて歓迎してもらえたと感じており、今後は特に名古屋を中心に、日本のメーカーを支援していきたい」

Grand Pitchが単なるピッチイベントではなく、海外スタートアップにとって“日本で本気で事業を進める入口”として機能していることを象徴していた。

優勝を果たしたUnitX Inc.

Central Japanという「共創の場」

Grand Pitch 2026は、Central Japanというエコシステムが、外部とどのように接続しようとしているのかを具体的に示す場でもあった。
愛知・名古屋という日本有数の産業集積地を舞台に、世界の革新的なアイデアと、地域が持つ強固な産業基盤が出会う。Grand Pitchは、そうした出会いを偶然に任せず、意図的につくり出そうとする「共創の場」として機能。Central Japanエコシステムの外向きの現在地を示していた。

  • グローバル水準の競争を受け止められるだけの舞台があること
  • 海外スタートアップが「日本・名古屋」を明確に市場として見ていること
  • その接点を地域として用意できていること

「内向き」ではなく、世界と往復可能なエコシステムが始動しようとしていたことが感じられた。

StartupSide Nagoya Night Party

支援の「冠」を越えて交わる、足元のエコシステム

DAY2の締めくくりとして参加したのが、TechGALAサイドイベントして開催された「StartupSide Nagoya Night Party」だ。
印象的だったのは、名古屋市のアクセラレーションプログラム採択者と、民間のアクセラレーションプログラム採択者が各々のプログラムの冠を背負ったまま、民間主催のサイドイベントで同じピッチに立っていたことだ。

分野に大きな偏りはなく、日常の気づきや身近な課題を起点としたテーマが印象に残った。ディープテックというよりも、これから形になっていくアイデアだ。乾杯を終え、飲み物を片手に聞くカジュアルなスタイルのピッチは、その後の交流につながる自己紹介に近い空気感だった。

懇親の中で印象に残ったのは、何か明確な目的を持って集っているというより、「まずはつながることを求めている」という空気が、会場全体に漂っていたことだった。


DAY2が示した「現在地」

DAY2を通して見えてきたのは、Central Japanがまだ完成されたエコシステムであるという姿ではないということだ。産業・大学・行政・民間が関わるチームとしての構造は整い、戦略も、競争の舞台も、足元の芽も存在し、そのすべてが同時に動き始めている段階にある。それらをどう循環させ育てていくのか。その問いが、DAY2では立体的に浮かび上がっていた。DAY3では、その循環を「場」として受け止めるSTATION Aiの実像が見えてくるのではないかと期待する。

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